Q1
静岡県富士市で〈oceano〉というブランド名で革の作品を制作する阿部洋太さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
革という素材を使うことによって出てくる素敵さや、可笑しみを大事にしてつくられた〈oceano〉の革製品を出品します。
〈oceano〉は阿部洋太がデザインから縫製、仕上げまでを手がける革製品のブランドです。
私が〈oceano〉の製品をデザインするときは、何か“ひとつ”の理由やモチーフをフォルムに溶け込ませています。
その“ひとつ”あるフォルムを持つ日用品は、どこか愛嬌や可笑しみを帯び、使い勝手の良い道具でありつつも日常に楽しみを与えてくれます。
“Wet-form”の帽子
革小物でよく使われる技法を大きな曲面で使うことで、不思議なフォルムを持った革製品という印象が生まれました。
革であることの可笑しみや素敵さを楽しめるモノを作っていこうという気持ちを込めて、この帽子を<oceano>の代表作としています。
“牛革”のオーナメント
折とカットで美しくも可愛らしい牛のフォルムを表現したオーナメント。
製作時にどうしても出てしまう革の端切れを利用するために作り始めました。
捨てるような端切れでも、造形を施すことで人々に大切にされる存在にできるということは、作家としての矜持でもあります。
私は手で物を作るのが好きで、それを生業にできたらとぼんやり考えているような人間でした。
デザイナーを志したり、鞄制作会社に勤めてもみましたが、どうしても自分でデザインから制作までを手掛けたくなって独立して作ったのが<oceano>です。
名前も革細工を始めたメキシコ滞在時の私の渾名からつけたもので、このブランド自体が私の作家としての姿となっています。
なかなかに自分勝手な活動理由ですが、好きなことをやるのであれば、そこに自信と誇りを持ってやろうという気持ちで日々製作しています。
Q2
oceanoさんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
革の裁断や手漉き、コバ処理などに使っている「革包丁」です。
私が革細工を始めたメキシコ南部の町では、質の良い道具が手に入りませんでした。
現地の革細工師に教わって、ペティナイフを逐一研ぎながら使っているような状態でした。
そんなおり、日本から遊びに来ることになった妻にお願いして、日本の革包丁を砥石と一緒に買ってきてもらったのです。
その切れ味の気持ちよさと言ったらありません。
すっかり気を良くして、その後の南米縦断に砥石とともに持っていくなどという、今思えばおかしなこともしました(南極帰りの革包丁を持つ人はそういないでしょう)。
この革包丁は革に関わるモノの中で、一番古くから私のそばにある大切な道具です。
私の作るものたちがこうして使い手と長く過ごせるよう、誠実に質の良いものを作る作家でありたいです。
Q3
oceanoさんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。
A3
メキシコで手に入れた「鶏の鍋掴み」です。
メキシコ南部のインディヘナ達が織った布と、ざっくりした鶏のシルエットが可愛いですね。
滞在中にお世話になった叔母の家のキッチンで使っており、その街を離れるときにお土産として市場で買って帰りました。
ビジュアルが良いだけでなく、頭を摘んで持ったりと絶妙に使い勝手が良くて気に入っています。
今回、革で出展される作家は4名。
皆さん個性がはっきり立ち上がっていて、何をどのように作るかが明確です。
oceanoならではの感覚から生まれたフォルム、とても新鮮ですね。
また、メキシコにゆかりがあるとのこと。
「鶏の鍋掴み」に日々触れながら、彼の地で感じたsomething。
oceanoのものづくりのエッセンスに潜んでいるのかもしれません。
oceanoの出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入って右手に4つ並んだテント。
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